1.元秘書の事例を紹介した理由

元秘書に係る「残業代不払い宣言」との報道に関連し、「補足とお詫び」をしたためHPに公表してから間もありませんが、並行して、一つだけどうしても確認しておきたいことがあり、筆を執りました。それは、「厚生労働大臣の事務所は、いわゆる三六協定を結んでいるか?」です。

そもそも、衆議院の委員会の場で、私が敢えて自分の元秘書の事例を紹介したのは、(同僚議員諸氏がイメージしやすいよう、)労働時間管理になじまない職種の例として議員秘書に言及したという側面とともに、もう一つ、塩崎大臣はじめ政務三役の皆さんに、秘書はじめスタッフの雇用管理実態を紹介いただくためでした。

 

2.厚労省政務三役の遵法意識

厚生労働委員会における「残業代払ってらっしゃいますか」との私の問いかけに、塩崎大臣は「必要に応じて払っております」とし、山本香苗副大臣を除く4人の政務三役が「追ってご報告申し上げます」と仰いました。しかし、残念ながら、どなたからも報告がない状態が依然として続いているのが現状です。(山本副大臣からは「残業が生じるような働き方をしていない」云々と、明確に答弁をいただいています。)

仮に、塩崎大臣が答弁されたとおり、塩崎事務所が私設秘書はじめスタッフに対し残業代を(必要に応じて)払っているというのであれば、塩崎大臣の事務所は、スタッフの過半数を代表する者との間で書面による協定(いわゆる三六協定)を締結し、それを行政官庁に届け出る必要があります。もし三六協定を締結することなく残業をさせていれば、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金というのが労働基準法の規定なのです。

私が厚生労働委員会で確認したかったのは、労働基準法改正案(いわゆる“残業代ゼロ法案”)の提出者である厚生労働省の政務三役の皆様に、「(足下の自分の事務所は)大丈夫ですか(労働基準法を順守していますか)」という、至極単純な質問だったのです。

 

3.秘書は労働時間規制の適用除外

もちろん、焦点となっている私の元秘書についても、改めてご説明しておきたいと存じます。

私の事務所では3人の公設秘書及び1人の私設秘書並びにパート1人を採用していますが、パートを除く4人は、国会と地元3地区の計4ヶ所において、文字通り私の「秘書」として、私と(メールや電話を通じて)密に連携しながら(すでに書いた通り)「議員の政治活動と一体不可分であって厳格な労働時間管理になじまない職務」(労働省通達)に従事しています。

その旨は、それぞれの秘書に対しても、名刺を手交する際を含め再三伝達してきてきているところです。

つまり、私のスタッフは、全員が、それぞれの地域を担当する、文字通りの「秘書」であり、既に「補足とお詫び」においてご説明申し上げた通り、労働基準法41条2号に「管理監督者」と並んで規定されている「機密の事務を取り扱う者」に該当し、労働時間規制の適用から除外されているのです。

厚生労働委員会では、
「正直、24時間365日仕事をしています。私はしています。…そういう中で、秘書だけ、労働基準法に沿って残業代を支払うということは、私はできません。」
と誤解を招くような発言をしたため、私の遵法意識に疑問を持たれた方も多かったと存じますが、
「正直、24時間365日仕事をしています。私はしています。…そういう中で、秘書だけ、労働基準法【に規定する労働時間規制】に沿って残業代を支払うということは、私はできません。」
と、括弧(【】)の部分を補足し読んでいただければ、上記のような事務所の実態に即した判断である旨、正確にご理解いただけるものと考えています。

 

4.「揉みくちゃ」状態の労働法制論議に一石を

最後に、改めて労働基準法改正案の重要性を指摘しておきたいと存じます。政府は「高度プロフェッショナル制度」と国民を欺くような名称を付けて新制度を導入しようとしていますが、要すれば、労働基準法に規定する労働時間規制の適用からホワイトカラーの一部を除外(エグゼンプト)しようとするものです。

ホワイトカラーエグゼンプション制度は、本来、時間外労働に対する賃金の支払いを不当に免れたり、労働時間を実質的に長くすることを、目的とするものでは決してありません。労働者の意欲を高め、効率的に働くことによって、仕事と生活の調和を実現していくためのものであり、本質的には労働者のためのものでもあるのです。

しかしながら、日本の労働規制改革は、今回の“残業代ゼロ法案”(ホワイトカラーエグゼンプション)や“首切り法案”(解雇紛争の金銭解決)、“一生派遣”(派遣法制の適正化)といったあらぬレッテル貼りが横行し、そうしたマスコミの論調に政治が振り回され、中途半端で使いにくい、労使双方にとって不幸な制度改正が繰り返されてきたのです。

そうした「揉みくちゃ」状態の労働法制論議に対し、私の問題提起は、日本の労働社会の実態を踏まえた冷静な議論をしたい、ということに尽きるのです。自民党は結局、制度の名称等を分かり難くすることによって国民を煙に巻こうとしているだけであり、その結果、かえって議論が混乱し、解雇紛争の金銭解決の制度化にも失敗、派遣法に至っては二度も廃案になってしまったのです。

「揉みくちゃ」状態の労働法制論議に一石を投じるつもりが、自分自身が「揉みくちゃ」になってしまったのは私の不徳の致すところですが、関連する報道等を通じて国民的議論が喚起されれば本望です。そして、私なりに、国会での議論が少しでも深まっていくよう、引き続き努力してまいる所存です。