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あだち康史
あだち康史
衆議院議員
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衆議院議員4期、大阪9区支部長。日本維新の会憲法改正調査会長、国会議員団政務調査会長、幹事長代理、コロナ対策本部事務局長等を歴任。1965年大阪生まれ。茨木高校、京都大学、コロンビア大院。水球で国体インターハイ出場。20年余り経産省に勤務し欧州に駐在。東日本大震災を機に政治を志す。
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あだち康史のコラム column

頻発する領土侵犯の背景にある根本問題 -国力のファンダメンタルズを回復せよ-

足立 康史

 

1.問題は民主党の失政か?

我が国固有の領土に対する中韓ロによる侵犯が頻発する事態や韓国の李明博大統領が天皇陛下に謝罪を求めた発言を受け、みんなの党の渡辺喜美代表は先週17日、「政治主導で断固たる対抗措置を取るべきだ」とのコメントを発表した。

渡辺代表も指摘している通り、現在の事態を招いた直接的な責任は民主党政権の外交無策にあり、特に尖閣諸島における体当たり船長釈放等の対応によって、日本政府の足元が見透かされていると言わざるをえない。

一方、自民党が政権にあった時代においても、特にその末期にあっては十分な対応ができていたわけではない、という事実を忘れてはならない。今回の民主党の対応を自民党は批判するが、2004年に中国人活動家が尖閣に上陸した際に当時の小泉首相は、今回と同様に強制送還しており、民主党政権も、当時の自民党政権の対応を参考にしたと言って憚らない。

いま大切なことは、自民党から民主党への政権交代とその後の民主党の失政に拘泥するのではなく、政権交代を超えて、いったい何が今回の問題の背景にあるのか、どう対応すべきなのか、改めて確認しておくことである。

 

2.民主党政権の対応はむしろ適切

私は、今回の中韓による領土侵犯に対する政府与党民主党の足下の対応は、現在の日本の国力の範囲内で言えば、これ以上は望めない、適切なものであったと考えている。

日本政府は、実効支配の有無によって対応ぶりを分け、1)韓国が実効支配している竹島については国際司法裁判所に提訴するなど強硬姿勢を貫き、2)日本が実効支配している尖閣諸島については中国の外交当局とも密に連携し問題の沈静化に努めている。

もちろん、ロシアのメドベージェフ首相の北方領土視察を許してしまい、それに触発される形で行われた李明博大統領の竹島上陸をも未然に防ぐことができなかった、その外交失政は非難されてしかるべきであり、与党民主党はその責めを選挙で受けることになる。

しかし、私が指摘したいのは、何処の国であっても、その国力の範囲内でしか対処できない、という冷徹なリアリズムである。先に「現在の日本の国力の範囲内で言えば」と書いたのは、そういう意味だ。

 

3.領土侵犯を招いた国力の低下

自民党政権末期から頻発するようになった中韓ロによる領土侵犯の背景には、日本の国力の明らかな低下がある。軍事力、経済力、そして政治力といった国力のファンダメンタルズの悪化がベースにあるということを、私たちは直視する必要がある。

韓国の李明博大統領が13日、竹島に上陸したことに関連して、日本の国際社会での影響力は「昔と同じではない」と述べた通り、少なくとも韓国サイドが、日本の国力が低下しているとの認識を有していることは明らかだ。

そして、韓国に指摘されるまでもなく、日本の国力のファンダメンタルズは、軍事面、経済面、そして政治面の3つの側面で、いずれも事実として低下していることを認めざるを得ない。

第一に、日本の軍事力を評価する最重要の基軸は、言うまでもなく日米同盟である。現在の日米同盟のおいて最大の課題の一つは普天間の基地問題であるが、沖縄での米軍駐留に対する反対運動は、単に民主党政権の失政に始まるのではなく、例えば1995年に発生した沖縄米兵少女暴行事件を発端に大きく拡大してきた経緯がある。冷戦の終結にともなって、日米同盟の再定義が求められてきた所以である。

第二の経済力についても、2008年のリーマンショック以降、韓国が金融緩和によってウォン安を享受する一方、日本は金融緩和せずに円高の加速に苦しんできた。こうしたマクロ経済環境の違いが決定的要因となり、韓国企業は割安なウォンを武器にして輸出を伸ばし、日本の電機等のメーカーは国内での操業を抜本的に縮小せざるを得ない厳しい状況に追い込まれている。

第三の政治力とは、端的には政治の安定だ。改めて私が指摘するまでもなく、李明博大統領が就任してから、日本の総理は福田、麻生、鳩山、菅と目まぐるしく変わり、野田総理で5人目、外務大臣に至っては6人目だ。こんな状況で、日本本来の外交を政治主導で展開することが出来るはずもなく、メドベージェフ首相の北方領土視察や李明博大統領の竹島上陸を許してしまうこととなった。

 

4.国力のファンダメンタルズを回復せよ

私は、別の(消費増税に関する)コラムで、安定政権の樹立が急がれると書いた。民主党と自民党は、欧州の債務危機を引き合いに日本国債暴落のリスクを取りざたし消費増税先行法案を成立させたが、むしろ国際金融市場は、現在の日本の消費税率が低いこと(=増税の余地が十分にあること)を評価しているのであって、「実際に増税して見せる必要はなく、政府が信頼たることを示せば十分」なのだ。

これと同じ意味で、中韓ロによる領土侵犯の頻発についても、いま本当に大切なことは、中国や韓国などの挑発に乗って無用に事態をエスカレートさせることではなく、日本国内に力のある安定政権を樹立することである。安定政権の樹立を通じた政治力の確保は、国力を回復するための基本中の基本といえる。そして、経済を立て直し、その果実を使って防衛力を整備していく必要がある。

国力のファンダメンタルズの悪化に伴う日本の相対的な地位の低下を直視せず、自民党のように民主党批判ばかりしていても、ますます日本国内の政治的安定を損ない、その結果として、外交上のポジションの悪化を招くだけである。

我が国の国力の変化に正面から向かい合い、その国力のファンダメンタルズを回復する中にしか、領土問題の全うな解決は望めないのである。

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