1.松井代表や維新の会への批判

明日からの国会に先立ち、昨日7月30日に参院の議運委(議院運営委員会)が理事会を開き、参院選で初当選した重度の身体障害がある参院議員2人の国会内での介護費用(移動支援)について、「参院が負担する」ことを決めました。

この点について、日本維新の会の松井一郎代表(大阪市長)は、「原資は税金。国会議員だけ特別扱いするのか」と疑問を呈し、介助費は自己負担にすべきとの考えを示しました。私も代表の指摘に全面的に賛成ですが、批判も少なくありません。

例えば、ネット上では、障害者差別解消法や障害者雇用促進法が、今回問題になっている通勤等「経済活動」に係るケアついては当該経済活動の受益者が負担すべきと規定していることをもって、両議員の勤務先にあたる参議院が負担するのは当然とする意見が散見されます。

2.真の争点は個人事業主への支援

― A.日常的活動      → 公費負担

―     B1.被雇用者  → 雇用者負担
― B.経済的活動 <
―     B2.個人事業主 → 本人負担

確かに、現行の障害者総合支援法に基づく公費負担(両議員がこれまで利用してきた重度訪問介護制度の移動支援)の対象が「日常的活動」(A.)に限定されている一方、それ以外の「経済的活動」(B.)については事業主負担とするのが障害者差別解消法の基本的考え方です。

実は、この点については松井代表も「障害のある人が働きやすい環境をつくるのは雇用者が責任を持ってやる話」(B1.)と指摘しており、認識に齟齬はありません。むしろ、真の争点は、その次のフレーズにあります。つまり、松井代表は続けて「国会議員は個人事業主」であると指摘し、両参院議員は自らの歳費等から自己負担で費用を支出すべき(B2.)と主張しているのです。

言うまでもなく、国会議員(参議院議員)と国会(参議院)とは雇用関係にありません。そうした障害者が被雇用者(B1.)としてではなく個人事業主(B2.)として活動するケースは、国会以外にも広範に存在します。

例えば、厚労省の社会保障審議会障害者部会でも、「障害者の中には自営によって社会参加ないしは職業的自立を果たしている人がたくさんおられます。(中略)通勤形態にも該当しないために、論点から落ちている」との指摘がなされてきた通りです。

3.れいわ新選組の“妥協の産物”

報道によると、れいわ新選組の皆さんは、経済的活動(B.)についても公費負担(A.)にするよう要求されているようですので、参議院の負担として税金で負担させることに成功したことは大きな成果と考えておられるかもしれませんが、それは違うし、そう思っているとしたら大きな勘違いだと断じざるを得ません。

今回の「参議院が負担する」という決着は、「国会議員は個人事業主」(B2.)であるという大事な事実を“あいまい”にして、「国会議員の活動の便益は国会全体が受ける」ために、受益者=国会(参院)が負担すべきとの考え方(B1.)を無理やり適用した結果に過ぎません。

つまり、れいわ新選組が今回の決着を受け入れたとすれば、これが前例となり、今後、国会以外の一般的な制度改正を求めていく際に、公費負担(A.)を求めることは難しくなってしまいます。そして、受益者(雇用者)負担(B1.)を求めていくことが精一杯となるでしょう。

れいわ新選組が本当の求めていたものは、「参院が負担する」という受益者(雇用者)負担(B1.)ではなく、政府が負担するという公費負担(A.)であったはずです。しかし、目先の成果に目がくらんで、日本維新の会以外の政党は受益者負担(B.)に同意してしまったのです。

これでは、障害者が働く職場が大企業など資金的に余裕のある場合にしか支援がなされず、多くの障害者が自立するための働きやすい環境を整えることはできません。

4.日本維新の会の“先憂後楽”

松井代表が「感情的になって、一部の人だけが優遇されるような制度を国会議員がつくるのは大問題だ」と指摘したのは、もちろん「身を切る改革」という維新の理念もありますが、マスコミを煽って目先の成果を急いでも、ロクなことがない、との厳しい眼差しからの指摘だったと思っています。

国会議員たるものに必要な心がけは「先憂後楽」。まず国民がサービスを享受出来るようにするのが優先であり、議員がサービスを享受するのは最後でいい。そうした観点から言えば、制度がないから「登院できない!」(れいわ新選組)はおかしくて、多額の歳費も手にするのですから、まずは自費で登院し、必要な制度化に力を尽くすべきだったのです。

私たち日本維新の会は、手を差しのべるべき方々をしっかり支援するのは当然だと思っています。しかし、それには財源も必要です。足もとでマスコミを煽って拙速な結果を招くのではなく、冷静かつ覚悟のある取り組みを、これからも続けていく所存です。