既存政党の「知らしむべからず」戦略の罪 ー 放送局にテレビ討論会を義務付けよ ー
1.住民投票は維新の天王山の戦い
統一地方選挙の前半戦が終わり、本日14日から大阪都構想の住民投票(5/17投票)に向けた大阪市による住民説明会が始まりました。大阪都構想について詳しく説明し、住民投票の判断材料にしていただくため、告示日までの13日間、連日行われる予定です。もちろん、今週末に告示される統一選の後半戦(4/26投票)も全力で戦い抜く所存ですが、その翌日27日に告示される住民投票は、大阪維新の会にとって天王山の戦いであり、都構想の実現に向け、正々堂々と戦い抜く決意です。
2.テレビ討論会は政党と放送局の責務
ところで、これだけの規模の住民投票が実施されるに当たって、どうしても納得がいかないのは、テレビ討論会が開催される見通しがないことです。昨年秋に実施されたスコットランドの独立を問う住民投票では、複数回にわたってテレビ討論会が開催され、独立運動を主導してきたスコットランド民族党のサモンド党首と独立反対派でスコットランド出身のダーリング元財務相とが議論を戦わせ、その様子をテレビが放映、世論調査もかませながら、丁寧な情報提供が行われました。
今回の都構想を巡る住民投票は、もちろん独立ではなく、府市統合による二重行政の解消と特別区の設置を通じた住民自治の拡充を図る、いわゆる大阪都構想に関するものですが、国の法律(大都市法:大都市地域における特別区の設置に関する法律)に基づく住民投票であり、憲法95条に基づく住民投票に準ずる、極めて意義の大きい住民投票なのです。政令市をはじめとする全国の都市にとって重要であるのみならず、道州制も視野に、今後の国の形を左右しかねない取り組みなのです。
にもかかわらず、反対派は、公開討論会に係るあらゆるオファーを拒絶しているとのことであり、その消極的な姿勢に驚くばかりです。特に国政政党は、先の拙稿で指摘したように、大都市法の提出者であり住民投票の枠組みの提唱者なのです。スコットランドの例に倣えば、大阪都構想を主導してきた大阪維新の会の橋下代表と都構想に反対する自民党大阪府連の竹本会長、公明党大阪府本部の佐藤代表らが公開討論を繰り返し、テレビ放映するのは、当然であり、政党の責任であり、また放送局の責務だと思うのです。
3.既存政党の「知らしむべからず」戦略
もちろん、既存政党が公開討論会に係るオファーを断るのは、いまに始まったことではありません。特に長年政権政党であり続けた自民党は、森総理の「無党派層は寝ていてくれればいい」発言を思い出すまでもなく、投票率は低い方がいい、有権者に提供する候補者や政策に関する情報は少ない方がいい、というのが本音としか思えない、そうした政権運営を繰り返してきました。年金の百年安心プランや社会保障と税の一体改革に象徴されるように、ほとんど国民に対する詐欺としか思えない形で、政策を遂行してきたのです。
大阪維新の会は、そうした政治の在り方、議会の在り方、政治家の在り方に異議を唱え、むしろ反対に、国民の皆様に本当のことを伝えたい、財政や社会保障、そして地域の将来について、本当のことを伝え、そして判断いただく、こうした、まったく新しい政治姿勢を党是とする政治グループだと私は考えています。財政であれ、社会保障であれ、安保であれ、エネルギーであれ、日本がこれから乗り越えねばならない課題に正面から向き合い、国民の皆様と一緒に乗り越えていく、当たり前の民主主義を実践したいだけなのです。
いわゆる「身を切る改革」というのは、そうした国民との対話に当たっての大前提として、リーダーが身を正す、それだけのことであり、ことさら自慢するようなことでもないのです。しかし、いまの政界が、議会が、政治家が、あまりに浮世離れした世界であるために、あえて「身を切る改革」と銘打って、国民に1割の負担を求めるのであれば、公務員には2割我慢してもらいたい、そのためなら、政治家は3割(身を)切ります、という具合に、至極当たり前の提案をしているだけなのです。国民との対話の入口論としての「身を切る改革」なのです。
4.マスコミは既存政党の姿勢を批判すべき
最後に触れておきたいのは、放送局の姿勢です。
なぜメディアは、公開討論会を拒絶する自民、公明、共産を批判しないのだろう。アメリカやイギリスでは連日討論会をやっている。無責任極まりない。そのくせ投票率が低いと嘆いている。
これは、ある方の昨夜のツイートです。全くその通りです。今日から大阪市内で始まった住民説明会も、大阪市の責務として開催しているのであって、それだけで情報提供が完結するわけがありません。連日の午前、午後、夜にわたる説明会会場を満杯にしても、有権者の100人に1人にしかリーチできないのです。だからこそ、私たちは(公平な情報提供という観点から)マスコミの取り組みに期待しているのであり、期待せざるを得ないのです。
もちろん、反対政党、自民党と共産党が手をつないで「知らしむべからず」戦略を採っている中で、報道が委縮しているのかもしれませんが、そもそも「知らしむべからず」戦略自体が罪なのですから、遠慮する必要はありません。放送事業者は、テレビ討論会を主催する旨を公表し、反対派が応じない、断る、拒絶するといった対応に終始するのであれば、そうした政党の態度をこそ、正面から批判すべきなのです。
選挙や住民投票にあっては、マスコミの責任が大きい、私たちはそう考えていますが、放送法に関連する規定はありません。敢えて言えば、
(国内放送等の放送番組の編集等) 第四条 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。 二 政治的に公平であること。
くらいですが、政治的に公平であることを担保するために、何も報じない、討論会をしない、では、放送事業者の責任を果たしているとは到底いえないはずです。
5.報道と表現の自由を守るために
先に触れたスコットランド独立に係る住民東京に当たって、テレビ討論会に参加した独立賛成派のサモンド党首は、こうした独立をめぐる住民投票は一世代に1回だけだとし、何度も繰り返すような性格のものではない、と指摘しました。
大阪都構想も同じだと思います。長い間論争になってきた大阪府市の不仲関係について、反対派は、いったん都制をひいてしまえば、政令市=大阪市を復活することはできない、と大阪市民が保守的な判断に傾くような情報操作に努めているようですが、逆に、大阪都構想をいったん否決してしまえば、私たちが生きている間に二度とチャンスは巡ってこない、と考える必要もあるのです。
だからこそ、今回の住民投票は死活的に重要であり、既存政党と放送事業者にはしっかりその責務を果たしていただきたいのです。本稿には、「放送局にテレビ討論会を義務付けよ」と刺激的な副題を付けましたが、大阪都構想にとっては、大阪市民にとっては、所詮、後の祭りです。
来月の住民投票の後に、放送法改正に動く必要がないよう、報道と表現の自由を守ることができるよう、放送事業者にはしっかりとその責務を果たしていただきたい、切にそう願う次第です。