2014年5月23日 衆議院 厚生労働委員会 法案審議 年金財政検証の楽観的過ぎる前提条件とマクロ推計
186-衆-厚生労働委員会-22号 平成26年05月23日
○後藤委員長 午前に引き続き、内閣提出、政府管掌年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
質疑を続行いたします。足立康史君。
○足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。
私、一昨日に若干予告めいたことを申し上げていたマイナンバーとかは一旦延期をしまして、おとついは、自民党の山下さんが財政検証の話をされました。伺っていて、ああ、そうだ、これをしなくちゃいけないということで、急遽テーマを変更しまして、きょうは、財政検証の話を中心に討論させていただきたいと思います。
若干時間を長目にいただいていますが、冒頭、これは通告していませんので、私の方から一方的、あるいは、もし若干お答えいただけるようであればお願いをしたいわけですが、七十五歳選択制の話が大分議論になりました。また民主党さんはおられませんが、この前の採決が採決でしたので、結構ですが。
大臣が民主党の質問者に対して一定の資料を出すよということをおっしゃられた点について、私は、若干懸念を持っていまして、余り中途半端なものは出さない方がいい、こう思います。
例えば、例の歳入庁の関係で、みんなの党の枠組み、いろいろ出したのに対して、それはみんなの党の前提にのっとった数字なんだという議論がありますね。ところが、やはり数字というのはひとり歩きをする。私もいずれ政権与党の仲間入りをさせていただきたいと勝手に希望していますので、今、自公政権で余り変な数字を出されるとやりにくい、こういうところであります。
なぜそういうことを言うかというと、大臣、私が申し上げるまでもないですが、七十歳選択制の前提をそのまま延ばして七十五歳選択制について数字を出すことに何か意味がありますか。
○田村国務大臣 今何も、これから制度設計も含めて検討して、しかも採用するかどうかもわからないという状況の中で、委員がおっしゃられるとおり、何か意味があるのかと言われれば、余り意味がないということになるんだと思います。
○足立委員 まさにこの七十五歳定年制については、自民党さんのJ―ファイルにあったということですが、私も余り精査はしていませんが、大事なテーマの一つだと思っているし、場合によっては、かねがね私ども、クローバック、クローバック、こう言ってきたわけですね。結局、比較的所得あるいは資産があられる方については、年金受給権をある程度、クローバックですから、特に税の部分を戻すというか払い戻すというか、そういう議論について、諸外国、カナダ方式とか、いろいろな形で議論されているわけです。
私は、この七十五歳定年制を大臣あるいは自民党さんがどういう枠組みでおっしゃっているか、ちょっと勉強不足でありますが、先ほど例えば民主党さんから損になるのか得になるのかという議論がありましたが、別に損になるケースがあってもいいと私は思いますが、大臣はどうですか。
○田村国務大臣 七十五歳定年制ではないので、七十五歳選択制でございます。(足立委員「はい、選択制です」と呼ぶ)
いろいろなパターンがあります。あえてここで私がまた何か言うと、またそれをもってして要らぬ誤解を招きますので。いろいろなパターンがそれは考えられるんだというふうに思います。
○足立委員 民主党さんがいろいろ質問されるものだから慎重になられて、出てくるものも出てこなくなってしまうわけですが。
要すれば、選択制ですから、釈迦に説法ですけれども、ある種の選択だから、その選択が、選択される方がそれでいいんだと思えばそれでいいわけでありまして、だから、制度全体として何か中央値があって、その中央値が、六十五歳からもらうケースと七十五歳からもらうケースを前提を置いて比較して、それが下回っていたら問題だとか、そういうことではなくて、選択される方の人生設計というか、その方の人生において、あるいはその方の働き方においてそれがいいんだということであれば全然問題ない。問題ないということはいいですね。
○田村国務大臣 設計がどうなるかはわかりません。これから検討でありまして、やること自体まだわからないわけでありますが、選択でございますので、そういうものを見て、選択というのは、自分が選ぶか選ばないかということをお決めいただければいいのであるということであります。
○足立委員 すると、大臣は大臣だから、余り自民党のことは答えられないと思うんですけれども、自民党のJ―ファイルにある選択制というのは、いわゆる財政中立というものなのか、大臣がおっしゃったように、選択する人がいなくても困るけれども、一定の財政改善効果を狙ったものだったかどうか、御存じであれば。自民党のJ―ファイルが言っている七十五歳選択制、選択肢を与えるということは、年金財政的には中立な提言を自民党としてしていたのか、年金財政の改善を含めた提案なのか、どっちか御存じでしょうか。
○田村国務大臣 J―ファイルは正確には「高齢者の方々の働く力や意欲を生かせるように、働き方等人生設計に合わせて年金の受給時期や受給額を弾力的に選択できるよう、」こう書いてあるわけで、具体的にそれ以上は書いてありません。
さらに具体的なのは、今般、鴨下一郎先生が議員連盟を立ち上げられた。その中では、もう少し具体的な御提案をこの間いただきました。その中にも七十五とは書いていないんですね。
だから、私もテレビ出演のときに、例えばという話の中の例示で出させていただいた七十五歳でございますので、いろいろな選択するための幅があるんだと思いますが、損する、得するということは念頭に置いていないとは言いませんけれども、そこまで厳密に定義をつけてこのJ―ファイルを書いたわけではないと思います。
○足立委員 私の勝手な私見を申し上げておくと、本当に私見で、党で調整したものではありませんが、年金財政を改善する効果が一定程度あるようなものがやはり望ましいと私は思います。その上で、しかし、選択される個々人においては一定の選択が行われ、その方にとっては効用が高まるという方式がもしあれば、それはすばらしいと思います。
いずれにせよ、さっきおっしゃった、七十歳選択制の前提をそのまま延ばして七十五歳選択制について何か政府として数字を出すことについてはやはり注意して、私が申し上げることじゃありませんが、ちょっと丁寧にやっていただかないと、また議論が、余り生産的な議論にならない。むしろ、場合によっては制度の設計の選択肢の幅でいろいろ議論が深まるような、あるいは議論の前提がわかるような、議論に資するようなデータの開陳をぜひお願いしたい、こう申し上げておきたいと思います。
通告の内容に入りますが、財政検証であります。
民主党さんはまだ結果が出ていない、結果が出ていないとおっしゃっていますが、いろいろな財政検証の枠組み、フレームは大分出てきているわけでありますので、十分議論には耐え得る中身が出てきています。
私、きょうその幾つかを取り上げて質問させていただくわけでありますが、二〇〇九年の財政検証の際に、マスコミからいろいろ批判をされました。国会においてどういう議論があったか全部フォローできていませんが、ありました。運用利回りを当時四・一と出したことについて、それは高過ぎるんじゃないかという批判がありました。
今回は、当時の批判を受けて、特にその批判に対応した形での何か対応、批判に対応した措置というか、そういうことが行われているようには見えませんが、そういうことでよろしいでしょうか。
○田村国務大臣 おっしゃられますとおり、四・一%という目標運用利回りが高過ぎる、過去数年を見てそんなに運用利回りは出ていないではないか、こういうお話でありました。
年金の財政計算上重要なものは何かというと、それは、名目運用利回り引くことの名目賃金上昇率、つまり実質運用利回りが大事であります。なぜかといいますと、名目賃金が上がれば、名目が上がりますから将来給付はやはり上がるので、将来の給付と足元の名目賃金というものは、完全にパラレルとは言いませんけれども、連動して動くわけであります。でありますから、財政の変動を考えた場合には、今申し上げました名目運用利回り引くことの名目賃金上昇率、この間、スプレッドを指標にするというのが重要であるということでございまして、今般は、この実質運用利回りというものをお示しさせていただいて、これを目標に据えていくということでございます。
○足立委員 いわゆる年金実務のお話も大分絡んできますので、局長でも大臣でも結構ですが、今大臣がおっしゃった、〇九年の財政検証の際の四・一の内訳であります。これは、いわゆる賃金上昇率を、当時はどう見積もり、今回はどう見積もっているか、ちょっと御紹介いただけますか。
○香取政府参考人 答弁申し上げます。
前回の財政検証では、実は三とおり、成長ケース、中位ケース、成長の低いケースをお示しして、通常言われているのはその真ん中のケースで議論しておりまして、そのときは、名目賃金上昇率が二・五%、名目運用利回りが四・一ということになりますので、今の御議論でいえば、名目賃金上昇率を上回る利回り部分というのは一・六ということになるわけでございます。
今回は、三月の末に財政検証の前提となるさまざまな諸経済の数字につきましてこの前提で議論するということでお示しをいただいて、今その作業に入っているものがございますが、全要素生産性を一・八から〇・五まで、かつ、労働市場への参入が進むケースと進まないケースに分けて、全体では八パターンお示しをしております。それぞれのパターンごとに物価それから実質賃金上昇率、実質運用利回り、それぞれが一定の幅を持って設定されているということになります。
例えば、名目賃金上昇率でいいますと、物価二に対して賃金二・二ですから、一・三ぐらいから四・五ぐらいの幅が示されておりまして、それに対応する運用利回りの数字が示されておりまして、その数字のいわば差というのがいわゆるスプレッドになります。
細かい数字は御説明しませんが、いわゆる中央値といいますか、それぞれの中央値ということで計算しますと、いわゆるスプレッド、名目賃金上昇率と名目運用利回りの差が一・一から一・七までの間におさまる。その間が今回の財政検証で用いる賃金上昇率と名目運用利回りの差の数字ということになります。
○足立委員 今おっしゃっていただいたのは、きょうは紙を配っていませんから聞いている方は非常に難しいかもしれないんですが、いわゆる中央値と言っていいのかな。今回のケースでいうと、ケースEにおける名目運用利回りは、再度確認ですが、今、一・一から一・七とおっしゃった、中央値においては幾らになりますか。
○香取政府参考人 ケースEのケースですと、これは労働力参入が進むケースで、全要素生産性、TFP上昇率が一・〇というケースですが、これですと、名目賃金上昇率と運用利回りの差、一定の幅がございますが、その中央値が一・七ということになります。
○足立委員 同じ〇九年の財政検証においても幾パターンかあるわけですが、当時、全体の名目の運用利回りが四・一となったときの実質運用利回りですか、これは、先ほど御紹介があった一・六だったと思うんです。すると、当時四・一といって批判をされたわけですが、その検討の前提というか基本的な枠組みは、さらに運用利回りは下げているんじゃなくて上げているという理解でいいですか。
○香取政府参考人 名目賃金上昇率とか名目運用利回りの算出のプロセスあるいは設定の仕方というのは、基本的に考え方は前回と変わっておりませんが、前回は、四・一という名目値で運用の議論がされた。当時、前提は、ある程度賃金が上昇してくるということで、賃金が二・五上がるということを前提の四・一だったわけですが、実際には賃金はほとんど伸びなかったので、そういう状況下の四・一は極端に高いという御議論で、いわば、私どもの立場からすると、説明が不足をしていたので誤解を招いたということで、今回は、賃金上昇率に対してどれだけ乗せるかということでお示しをする。
今回の一・七も、申し上げましたように、それぞれの経済前提によって数値は変わってまいります。その中で、今、ケースEということでお話がありましたので、ケースEでお示しをすると一・七ということになりますし、別のケースですと、それぞれまたそれよりも小さい数字のところもございますので、その意味では、一・七というのは、高目に設定をしたということではなくて、計算の結果出てきた数字がそれであるということでございます。
○足立委員 大臣、ぜひちょっと参入してほしいんですけれども、香取局長の議論は、プロですから当然ですが、非常によくできた議論でありまして、いろいろな議論ができますが、少なくとも、五年前の財政検証で批判された点について反省、それはやはりそうでしたということではなくて、これは説明が悪かっただけだと。だから、大きく試算の前提を今回、バリエーションはあります、バリエーションはありますが、五年前の試算についても、何かそれが問題があったということではないですね。
要すれば、見せ方が必ずしも巧みではなかった、今回はより巧みに国民にお伝えをしていかないと正しく御認識いただけない、こういうことで間違いないと思うんです。だから、前回批判されたが、その批判を受けて、プレゼンテーションは変えるけれども、本質的な年金財政に関する物の見方、これは厚生省として何か見直したということはないですね。
○香取政府参考人 結論から申し上げますと、年金財政の財政検証の考え方でありますとか基本的な枠組みについては、考え方は変えておりません。今回、やはりモデルをつくって計算しておりますので、モデルの精緻化等々改良は加えておりますが、基本的な物の考え方は変わっておりません。
今のお話でいうと、運用利回りというものがどういう意味を持つか、どういう考え方で設定されているか、あるいは年金財政にどういう影響を与えるかという意味でいいますと、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたように、実質的な賃金上昇率というものが年金財政、負担、給付両面に基本的に影響を与えますので、それに対して利回りがどれくらいとれているか、その数字が実はいろいろな計算をする場合でも大きな数字になりますので、名目の四・一ではなくて、まさに運用にとって意味のある数字という形でお示しをする。そういう意味でいうと、お示しの仕方をわかりやすくするということで、今回そういう形をとったということでございます。
○足立委員 そういうことで、特に何かを改めるものではないと。大臣も同じですね、一応。
○田村国務大臣 前回は、例えば物価上昇率一、実質賃金上昇率は一・五、あわせて名目賃金上昇率二・五、これに対してどれぐらい運用利回りがとれるかということで、こういう経済状況ならば四・一ぐらいは回せるであろうと。
重要なのは、この一・七という差であったわけであります。事実は二・六ほど運用利回りがありますので、思った以上に成績がよかったというのが結論だと思います。
実際問題、四・一という名目運用利回りが高過ぎると怒られた。前提は先ほど言ったような経済状況であろうということだったわけでありますが、実態は違っていた。
ですから、今回は、幾つかのパターンで、経済状況がこうならばこういうパターンが出てきますよねというようなお示しの仕方をしたわけでありまして、前回よりもより、こういう言い方がいいのかどうかわかりませんが、親切にというか、わかりやすくと言った方がいいのかもわかりません、いろいろな状況でも対応できるような書き方をさせていただいたということであります。
○足立委員 これは非常にテクニカルなので、ちょっと通告からばらけてというか、通告どおりにやれないかもしれません。
大臣でも香取局長でもいいんですが、私が実はきょうのこの時間で財政検証について一番確認しておきたいというものを一つだけ挙げるとすれば、まさに今大臣がおっしゃった、いろいろなケースについて試算をするというわけですけれども、そこで言うケースというのは、前提が大きく二つあって、いわゆるTFPというか、労働力に関する設定。労働市場への参加が進むか進まないか。さらには、いわゆる経済成長。中でもTFP上昇率のバリエーションでケースがつくられている。ところが、不思議なのは、運用利回りのバリエーションはないんですね。それぞれの経済状態に対して、モデルに入れると、運用利回りが一意に出てくるモデルになっていますね。香取局長、そういうことでいいですか。申し上げていることはわかりますか。
経済状態を外生的に入れれば、運用利回りは一意で、もちろん幅はあるわけですけれども、その中央値は、例えばTFP一・〇%のときには一・七、こう出てくる。もちろん幅はつけてあるわけですけれども、この一・七というのは一意にモデルで出てくるわけですね。それはいいですか。
○香取政府参考人 モデルで出てまいりますが、例えばケースEのケースで申し上げますと、ケースEは労働力参入が進むケースで、TFP上昇率は二〇二四年度以降は一・〇ということになります。この場合、物価が一・二で、対物価の賃金上昇率に一・二から一・四という幅が出てまいります。これは、いろいろなほかの係数の中で、パラメーターでそれぞれ、例えば国際収支のやりとりをどのくらいに置くかとか、そういった幾つかの要素がございますので一定の幅が出てくる。そうしますと、実質運用利回りもそれに合わせて二・六から三・五と一応の幅が出てくるということで、先ほどの名目運用利回りと実質賃金上昇率の差が一・二から二・二ということになって、中央値が一・七ということになりますので、その意味でいうと、賃金についてもあるいは利回りについても一定の幅がある形でモデル上は出てくるということになります。
実際の財政検証の計算をする場合には、前回もそうでしたが、一応中央値で数字を使って、あとは、振れのときにどれくらいの感応度で数字が動くか、それをお示しすることで全体の財政検証の形を結果でお示しするという形をとります。その意味では、モデル上決まってくるものではありますが、一個ぴたっと決まるということではない形で、幅がある形でお示しをしているということになります。
○足立委員 ちょっと議論を先取りしてしまったので、もう一回戻ります。
今の議論は、私の問題意識としては、モデルがありますと。結局、モデルなんですね、この検証というのは。モデルのインプットとアウトプットがありますと。もちろんいろいろなパラメーターがあるわけですけれども、モデルによって結果は当然変わるわけであります。
きょうお配りをしていませんが、このさまざまなTFPの各ケースについて、実質的な運用利回りの中央値と幅がこの図で出ていますが、極端な、極端といいますか、ケースについても、実現する蓋然性の高いケースと、例えば労働市場への参加が進まないケースHでは困るわけでありますから、このケースそれぞれについても蓋然性が高い、あるいは政府として目指すケースが、真ん中か上の方かわかりませんが、あります。そこについてのモデリングがどうかによってこの黒い丸は決まってくるわけでありまして、民主党さんは早く試算を出せと言うけれども、私は、このモデル自体に大変課題がある、そう思っているわけです。
委員の方には申しわけない、紙を配っておくべきだったんですけれども、まず、せっかくの機会なのでさっさっと通告した話だけいきますと、実質的運用利回りをはじくときに、いわゆる賃金上昇率を使って、物価上昇率を使っていない理由を端的に教えてください。
○香取政府参考人 端的に申し上げますと、これは何度も大臣からも御答弁申し上げていますが、まず保険料は、基本的には、賃金の上昇率、賃金に対して一定の料率を掛けて収入を出しますので、賃金上昇率によって収入が決まる。
歳出の方も、年金は基本的に賃金に見合って出すということと、裁定をするときに、その時々の現在価格に置き直すという作業をします。これは実質的に賃金スライドをさせているということになりますので、給付といいますか支出も賃金で決まるということになりますと、全体として、年金の歳入歳出は、名目的な賃金上昇がどれくらいあるかということによって両サイドとも基本的には決まってくるということになります。
現在のフレームは、入りの方が保険料、これは料率が固定されていて、積立金とその運用益、出る方が給付ということになりますから、そうしますと、名目の賃金上昇率でふえていく給付、そして歳入、保険料と積立金ということになりますから、その意味でいいますと、名目賃金上昇率に対してどれだけ運用利回りが高くなっているかということが年金財政へ与える影響が非常に大きいということになりますので、名目運用利回りマイナス名目賃金上昇率というのを一つのメルクマールでお示しすることにしているということでございます。
○足立委員 この質問をさせていただいているのは、給付と負担、あるいは所得代替率という観点から賃金に着目するというのはわからないではないんですが、私もまたちょっと時間があったらこれを計算というか勉強してみたいと思うんですが、この財政検証において賃金上昇率を使用することの意味というか、意味は今おっしゃったとおりかもしれませんが、それの影響みたいなものはまたちょっと考えてみたいと思います。
それから、通告の三つ目、運用利回りの想定に大きな影響を与える変数は何か、こう通告をさせていただいている点については、モデルの中身でやりますので飛ばします。モデルの全体像については承知をさせていただいておりますので、割愛いたします。
私は、大臣、きょうこのテーマを取り上げさせていただいて、先ほど話をしたわけですけれども、〇九年との比較においても、今回の財政検証は、うまく説明していただきたいと思いますが、恐らくマスコミが一番注目をするかもしれない部分は、先ほどの中央値の、中央値と言っていいのかな、いわゆるケースEの一・七、この数字が、例えば五年前であればそれは一・六であったわけでありまして、この一・七という数字が果たしてどうなんだという議論になってくると思います。
大臣は十三年から二十四年の実績を見てくれということかもしれませんが、私に言わせれば一番実現する蓋然性が高いこのケースEにおいて運用利回りが一番上がる、要は、くの字型の頂点のところがケースEになっているわけです。これはなぜ、くの字型になっているかというと、モデルがそういうモデルだからですね。
いろいろバリエーションはありますよと言いますが、果たして、ケースEにおいて一・七の運用利回りが実現する見通しは、一般的には、私は、いかがなものか、ちょっとそれは高過ぎないか、五年前と同じような感覚でこの中央値、ケースEについて、くの字型の頂点については高過ぎないかという印象を持ちますが、大臣、お願いします。
○田村国務大臣 これは、一定のモデルを置いて出てくる数字でございまして、決して恣意的な幅を持たせているわけではないわけであります。
これは、TFP上昇率が上の方が逆に、かえって中央値が低い、こういうものらしいです。私も専門家じゃありませんから、賃金が上昇する分だけスプレッドは落ちるという話らしいです。ですから、これは決して恣意的な数字じゃなくて、こういう形で出てくる。
しかも、今回、余りF、G、Hの方に行ってもらうと困る、これは労働市場への参加が進まないケースですから、そういう思いがあるわけでありますから、進むケースの方を目指したいわけでありますけれども、それぞれの中央値は違いますが、それも含めて、財政検証の中において所得代替率がどれぐらいなのかという話になってくるんだと思います。
でありますから、我々が所得代替率を守りたいがために何か恣意的な数字を入れておるというわけではありませんし、今回の場合は、それぞれのパターンにおいてそれぞれいろいろな財政検証が出てくるわけでございますから、まだ私の手元にも来ておりませんけれども、それが最終的に発表になられたときに、国民の皆様方に、これを見ていただきながら、いろいろと分析いただき、御判断いただければというふうに思うわけであります。
○足立委員 厚生省は厚生省で、専門家を集めてやっているわけですね。厚生省が集めている専門家以外にも、さまざまな専門家がある、あるいはシンクタンクがある。これは、通告でも申し上げている、いわゆるTFPもそうだし、あるいは長期金利、こういったものの見通しについて、やはり甘いんじゃないかという批判が今回も私は来ると思います。必ず来ると思います。
事務方には私が手持ちのそういう民間の試算もお示しをしたわけですが、今御紹介いただいた、大臣もこういうものだとおっしゃっている財政検証の前提について、その前提になっている成長率とか金利については、民間のシンクタンクも大体そういう相場だ、こういう理解でいいでしょうか。
○香取政府参考人 その前に、先ほどの、先生のおっしゃるところの中央値、Eが、中央値が蓋然性が高いかどうかはわかりませんが、一番運用利回りのスプレッドが高くなる、いわばそこで一番高目の運用をとるということになっているのではないかとのお話ですが、ちょっとテクニカルに御説明します。
上の方のケースは、全要素生産性が高いというケースになります。賃金上昇率は、基本的には経済成長率に連動して高くなっていくということになります。他方、金利の方は、基本的には利潤率をベースに金利が決まってくるわけですけれども、利潤というのは、分母が資本ストックで、分子が収益ということになります。実は、成長が高くなってきますと、経済成長に連動してストックがふえてきますので、分母が大きくなるという構造になります。
したがいまして、同じような経済環境で運用利回りを我々のような形で算定する場合は、そういう資本ストックの蓄積が、成長が高い方が高くなるということになりますので、その意味でいうと、賃金上昇率との差で見ていくと、スプレッドはむしろ上の方が小さくなるという構造になる。したがいまして、同じ労働投入が進むケースのAからEということになりますと、下の方に行くによって高くなるということになります。
他方、低成長のケースの場合には、ほとんどゼロ成長に近いので、金利と成長率、あるいは長期金利と利潤率の相関は低いということなので、これはイールドカーブという、市場における将来金利の見通しを使って見ますので、足元の数字に近くなるので、非常に低くなるということになります。
お話しの、こういった前提をどのように置くか、他のシンクタンク等々がどのように置いているか。これは、それぞれ、御専門の方が数字を置いておられるので、数字は違ってくるということになりますけれども、例えばお話のあったシンクタンクの例ですと、やはり今の日本国の財政状況なんかを見て、国債の金利、長期金利なんかは、恐らく政策的に低目の誘導が行われるであろうといったようなことをちょっと織り込んで、割と低目に設定して計算するといったような、それぞれ、いろいろな現実の市況に対する工夫を織り込みながら推計されておられますので、その辺の見方によって違いが出てくるということがあるのではないかと思っております。
○足立委員 財政検証という作業自体に茶々を入れているようで申しわけないわけでありますが、今おっしゃったように、例えば今、資本ストックと利潤率の関係とか、ある種の学説にのっとったマクロモデルになっているわけでありまして、経済学者によっては、その考え方についても違うという学者もあって、そのモデリングの枠組み自体にバリエーションが本当はあるわけですね。
だから、政府としては、財政検証ですから、本来その幅についてもある程度持っておくべきだし、このモデルを一意に、一つのモデルを選択してしまっているわけですね。そのモデル選択の幅についてはないわけであります、当たり前ですけれども。そうすると、さっきおっしゃった、厚生省が採用している、あるいは委員会、専門家の方々が採用しているモデルによると、まさに、TFPが上がる中で運用利回りが下がっていく、くの字型になっているわけであります。
すると、多分、財政に与える影響は、結構難しいアウトプットになってくると思います。難しいアウトプットというのは、要すれば、これは個人的な推測ですよ、香取局長、もし大体頭に入っていたらぜひお答えいただきたいんですけれども、多分、計算すると、ケースにかかわらず、ある財政について、楽観的なものか、悲観的なものが出てくるかというのは大体わかりますよね、局長であれば、この前提であれば恐らくどういう見通しが出てくるか。私は、ケースEについても楽観的に過ぎる、こう思っているわけですが。
それはさておいても、このケースEからケースAは前提がわかっているわけですから、年金財政に与える影響は大体、どうですか、どれが一番年金財政にはよさそうですか。もうわかりますよね、局長であれば。
○香取政府参考人 恐らく、どれがよさそうということではないのではないかと思っております。
年金財政に影響を与える要素というのは御案内のようにたくさんありまして、出生率がそうですし、それから労働力参入、要するにどれだけの人が働くかということもそうですし、さまざまな経済諸前提もそうです。
かつ、それぞれの要素が相互に絡み合ってくることになります。労働力参入が進まなければ、労働力が不足するわけですから、高い成長が望めないということになりますので、労働力参入しないのに高い成長、高い成長なのに金利がすごく低い、そういう組み合わせはないことになります。
したがって、言ってみれば、さまざまな諸要素の組み合わせの結果が置いた前提によってどういうふうに年金財政への影響があるか、そういういわばプロジェクションをお示しするのが財政検証ということになります。
その意味では、一般的には、もちろん成長している方が、賃金も上がるでしょうし金利も高くなりますから、年金にはプラスだ、そういうことが言えるわけですけれども、他方で、成長すれば今度は給付も大きくなるという要素も出てくるわけですから、そうすると、どこで均衡するか、均衡点がどこになるかということになります。
足元は、出生率も回復をしてきていますし、デフレからの脱却局面にありますので、全体としては年金財政にとってはいい影響が多い、要素が多いわけですけれども、もちろん、今後の成長をどう見込むかとか、先ほどから議論になっております利回りをどのように見るかによって、当然年金財政は違ってきます。
どれがいい悪い、あるいはどのケースだとうまくいくかというのは、ある意味、むしろ経済前提の方がどうなるかということで年金は影響を受けるので、そこの関係をお示しするのがむしろ財政検証だというふうに、そういう意味で言うと、結果ではなくて、プロジェクションの議論の土台、これからのいろいろな年金の議論をするための土台をお示しするものだというふうに御理解いただければと思います。
○足立委員 ありがとうございます。
まさに局長がおっしゃったとおりだと思うんですよ。だから、もう土台はほとんどできているわけです。そうですね。
労働参加のバリエーションとおっしゃったけれども、その労働参加のバリエーションが金利に与える影響等は、もうモデルで回ることになっておるわけです。そうですね。
すると、ケースがA、B、C、D、E、F、G、H、八つのケースについての諸前提は、モデルでもう決まってきますね。私が申し上げたのはそういうことです。
だから、いろいろなことで変化しますと言うんだけれども、このモデルを採用した時点で、バリエーションは八つであって、それぞれのケースにおいて、TFPが上がれば労働参加も進み、賃金がこうなり、金利がこうなる、こういう枠組みが一意にあると私は思っているんです。そうですね、局長。
だから、私が申し上げているのは、結局、ここに財政検証の枠組みがもうあるんです。あるときに、二つ問題がある、この枠組みというのは、大きく二つあるわけです。
すなわち、いわゆるケースE、ケースEにこだわって申しわけないですけれども、くの字の頂点と、くの字の形、この二つで全部決まっているように、ちょっと乱暴かな、局長からすれば何と乱暴なことを言うやつだと思うかもしれませんが、経済モデルというのは大体そんなものだと思うんですよ。
だから、厚生労働省あるいはその委員会の専門家の方々が、くの字の形を経済学説としてモデルに取り入れ、その頂点を一・七で置いたと。あとは、国民年金、被用者保険、いろいろなオプション試算をするわけでしょう。オプション試算は厚生省はお手の物です。お手の物だけれども、その大前提が本当にこれでいいんですかということをきょうは議論したいわけですね。
そのときに、局長、八つのオプション、これは局長は納得がいっているかもしれませんが、国民はこれで納得いくかどうかわからぬと僕は思います。
特にこのケースEの一・七については、繰り返しますが、五年前の試算と大枠は変わらないんですよ。だから、同じ批判が必ず出てくると思う。
それから、上の、くの字のこの傾きについては、経済成長、恐らくアウトプットは結構ややこしいというか、必ずしもすっきりした答えにならない。それはそうですよね。だって、経済成長するのはいいことなんだけれども、運用利回りは下がるわけですから。これは、計算してみないとわからないような結論になっていると思うんです。
モデルとしてはおもしろいと思うんですよ。モデルとしてはおもしろいけれども、では、国民に対して誠実なプレゼンテーションかというと、そうではないのではないかと私は指摘をしたいわけですが、私の指摘の意味、局長、おわかりいただけますか。
○香取政府参考人 まず、このモデルですが、お話しのように、モデル自体をどれだけ客観的なものにするかというのはやはり大きな議論でございまして、今回、委員会には配っておられないようですけれども、一定のコブ・ダグラス型のモデルをつくりまして、基本的には、労働投入と資本の投入と全要素生産性で実質経済成長率をはじき出し、それを賃金と資本あるいは利潤等に分けて、それぞれまたモデルに返す、幾つかの指数を外生で与えるというモデルを用意したわけです。
もちろん、このモデル自体をどう評価するかという御議論は当然専門家の方の間でもあろうかと思いますが、通常、諸外国における年金の長期的な財政推計を行う場合に、こういったマクロのモデルを使って推計というかプロジェクションを行うということをやっている国は、私どもの知る限り、たしかほとんどないはずなので、その意味では、かなり精緻な作業を我々はしているというふうに考えております。
その意味では、これ自体は、さまざまな見方があろうと思いますが、私どもとしては、それなりに合理性、客観性のあるモデルをつくってお示しをし、かつ、数値は、ある意味客観的な数値を使って出てくるので、前提はそういうものだと。
結局、それによって、財政の結果、私どもは今作業中なので、果たしてどういう数字が出るかわかりませんけれども、それはそのものとしてお示しをし、一定の幅を持った形でお示しをする。
やはり成長する場合、しない場合、特に成長しなかった場合のケースをどう考えるというのは必ず議論になりますので、実質的には向こう何十年もゼロ成長になるようなモデルも今回はお示しをしておりますので、出た結果に対する御評価というのはあろうかと思いますが、モデルをつくった段階で全てが決まってしまうということでは多分なくて、やはり出た数字を見て、またそれでさまざまな御議論がなされて、その上に次の制度改正の議論をさせていただくということになるんではないかと思っております。
○足立委員 これは前提が変わればアウトプットが変わるわけですけれども、前提が変わらなくても、例えば運用に失敗すれば、国民の財産と言っていいのかな、年金ですから、当然、運用に失敗するケース、運用が、大臣が先ほど御紹介いただいたように、上振れするアップサイドリスクとダウンサイドリスクがあるわけです。むしろ厚生省が世にちゃんとわかっておいてもらうべきは、そういう大きなある種の運用のアップサイド、ダウンサイドの幅がというか、アップサイドにぶれるとこんなにハッピーですよ、でもダウンサイドにぶれるとこんなに悲惨ですよということは、心の準備をしておいてもらう必要が国民に対してはあると思うんです。
だから、これは誰のために試算しているかなんです。そもそも財政検証というのは、今おっしゃったように、これは何のためにやっているんですか。